どうして旅が好きなの、と聞かれて

どうして旅が好きなの、と聞かれて

 

こんにちは。

ご無沙汰しておりますが、いかがお過ごしでしょうか。五月があっという間に終わり、徐々に陽射しが暑くなってまいりました。私たちの通うキャンパスにも涼しげな装いの学生が増えています。夏が顔を覗かせ始めているようですね。

さて、往々にして暑くなると人は、海に、山に、どこかに出かけたくなるものです。海外に出るのもよいでしょう。幸運にも私の周りには海外経験が豊富な上に、好んで旅に出るような友人が数多くいます。かくいう私も旅が好きな一人です。
旅はいつだって私に多くの出会いと新しい発見をもたらしてくれました。インドの夜行列車で出会った夫婦との会話や独りで過ごしたポーランドの冷えた夜をきっと忘れることはありません。それらの記憶は間違いなく今の私を形作っています。そんな旅の魅力を知ってほしい。

というわけで、今日は旅の話です。

以前、ENJIの友人にこんなことを聞かれました。
「どうして旅が好きなの?」
とてもシンプルな質問です。とてもシンプルな質問であるにもかかわらず、どう答えればよいかすごく悩んだことを今でも覚えています。結局なんて答えたか、残念ながら全く覚えていません。都合のよい記憶力ですね。ですが、今考えると答えられるはずがなかったようにも思います。というのも、旅について私は真剣に考えたことがありませんでした。

そもそも旅とはどういったものを指すのでしょうか。おそらく、一人でバックパックを背負い、自由に放浪しているようなイメージを持たれる方が多いはずです。ジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」や沢木耕太郎の「深夜特急」を想像される方もいるでしょう。正直に言って私もその程度の感覚で旅を捉えていました。これは今でもあまり変わってないかもしれません。悲しいことに旅について考えれば考えるほど、これが旅だ!というようなものから遠ざかっているような気がします。甘えんな、ちょっと海外に行ったくらいで分かるようなものじゃないぞ、と言われているようです。それでも自分の経験を通して、旅が内包するわずかな断片、あるいは旅を構成する小さなパーツをいくつか手に入れることができたと信じています。次に書くのはそんな旅のかけらです。

 

① 旅行と旅の違い
旅行と旅は明らかに異なるものだと私は考えています。それは、どちらがより好ましいものか、ということではありません。言うまでもなく、どちらもそれぞれ良い部分を有しています。単に旅が私の性に合っていたというほかありません。

では、何が旅行と旅の違いをつくるのでしょうか。

私が考えるに、行動のペース、もしくは時間の流れ方がこの二つを決定的に分けているはずです。点と線をイメージすると分かりよいかもしれません。というのも、旅行では訪れる場所ごとに何かしらの目的地(点)が用意されています。それは観光地であり、リゾートのような行楽地です。それら点を十二分に楽しむことで旅行は成立します。旅行では移動や何気ない時間(線)を楽しむことを目的にしているわけではないため、どうしても道中における時間の流れが速くなります。観光バスやツアーのように見どころを最短距離でまわり、それらを効率よく楽しむというわけです。つまり、誤解を恐れずに言えば、あらかじめ決められた予定を実際に経験して楽しむことが旅行の魅力だと言えます。
一方で、旅に予定はありません。おおよその計画はあるものの、はじめから決まっているのは航空券程度ではないでしょうか。旅程の多くは、その場次第、すべて自分で決めていくのが大きな魅力になります。ここにあと何日滞在しようか、今日はだらだらしようか、明日は街を散策しようか、行動が制限されることはまずありません。そういった何気ない時間(線)が一日の大部分を占めるため、どうしても時間はゆったりと進みます。ホステルで夕飯をつくったり、ルームメイトと会話したり、非日常の中に日常のような生活を確かに感じることができます。時として、そんなのんびりとした一日に、旅のハイライトと言うべき出会いをすることもあって、旅は本当に何が起こるかわからない。だから私は旅をやめることができないのかもしれません。

② どうしたって地元の人にはなれない
旅の最中にあって必ず気を付けなければならないことがあります。どう頑張っても地元の人になることはできない、ということです。旅をしていると、現地にいる人と話す時間や一緒に行動する機会が増えます。それは旅において誰もが求める喜びであり、孤独から自分を守る唯一の手段です。それはそれで良いのですが、地元の人たちと交流していくうちに、まるで自分がその土地の習俗に染まることができたかのような感覚に陥ることがままあります。しかしながら、本当に染まることはふつうできません。厳しい言い方をすれば、私たちは彼らにとって一旅行者であり、外からやってきた日本人です。とりわけ発展途上にある国の観光地や人が多く集まる場所では、日本を含め先進国と呼ばれる国からやってきた旅行者は「お金を持っている人」と認識されます。彼らと親しい友人になることはできても、彼らの文化を自分のもののように扱うことは許されないのです。日本でも同じようなことがいえるでしょう。こればっかりはどうすることもできません。親しき中にも礼儀があるように彼らの生活や文化に敬意を払ったうえで、私たちは旅を続けていかなければいけません。
その中にあって、私は新しい旅の面白さに気づくことができました。それは、その土地では善悪や正邪の判断が問題となっているようなことでも、私たちにとってそれらの問題は彼らの風習や文化、伝統として捉えられるということです。ある意味冷めた目で俯瞰することで、集団の中の対立や議論を彼らの生活の一つと解釈し、彼らをより理解できるようになります。些細なことかもしれませんが、そうやって私たちは旅から学んでいくのだと思います。当たり前のことですが、常に忘れてはいけない大切なことです。

③ ひとりの時間
ひとりの時間を大事にしてください。必ずと言ってよいほど、ひとりで過ごした時間は自分を強くしてくれます。旅に慣れてくると多くの人はホステルや安宿に泊まり、用意された個室よりも雑多なドミトリーを好むようになるでしょう。私もホステルのキッチンでほかの旅人たちと食事をしたり、期せずして出会ったルームメイトと話し込んだりすることを毎日の楽しみにしています。それでも、絶対にひとりの時間を持つように心がけています。ちなみに私は旅の間、ひとりの時間を使って日記をつけるようにしています。

よくバックパッカーや一人旅と言うと、自分探しの旅だと思われることがあります。個人的に、自分を探しに旅に出たことはないのですが、かといって必ずしもそのイメージが間違っているわけでもありません。というのも、私はひとりの時間によく自分自身や自分と他者との関わりについて考えます。それは「自分を探す」というよりも、「自分を探る」といった方が分かりよいでしょう。普段、生活を営んでいる慣れ親しんだ環境を離れ、知らない土地にやってくることで、はじめて自分の中に深く潜ることが可能になります。それは、アイデンティティや個性といったものを見つける作業のようなものです。
個人は関係の中で相対的に成り立つものだと私は考えています。例えば、私は「旅が好きで」、「ENJIに所属していて」、「映画をよく見ます」、「大切な友達がいて」、「彼らの写真を撮るのも好きです」、「音楽の趣味はまぜこぜで」、「ご飯をたくさん食べます」。そのような一つ一つの関係が集まって「私」という立体的で歪な存在をつくり上げているわけです。旅におけるひとりの時間は、それら無数にある関係を自分の中に呼び起こします。日常のかかわりから遠く離れることで、関係や繋がりで溢れかえった海が目の前に見えてくるようです。その中に深くまっすぐ潜ることで、今ここに存在する曖昧な「私」をまざまざと思い知り、「自分を探る」ことになるのです。

 

私は旅をしていくうちに上に挙げたようなことを気づくことができました。誰が何と言おうと、私は自分で見つけたこの旅のかけらを大事にしていくことでしょう。かけらはこれからも増えていくかもしれません。
今は、次はどこへ行こうか、そんなことを考えています。シベリア鉄道なんかどうでしょう。アフリカ大陸にも行ってみたいですね。きっとこんな感じで私はこれからも旅を続けていくはずです。

だいぶ長いことお付き合いさせてしまいました。レポート丸々一つ分くらいあるでしょうか。正直なところ、お伝えしたいことはまだまだ山のようにあります。いずれまた書かせていただけたらとても嬉しいです。今回のお話ですが、旅の良さに気づいてもらえたらなって書き始めたはずが、いつの間にか、自分自身が旅で学んだことを書いていました。でも、旅の良さはここまで読んでくださった皆様自身が経験しなければ分からないのかもしれません。どんな分野でもそうであるように、学ぶ価値のあるものは教えることができないはずです。お恥ずかしいことに自分勝手な意見で終わってしまいそうですね。旅について書いているのだからLIFE誌のスローガンばりにかっこいいことを言ってみたいものです。
それでも、一つだけ忘れてほしくないことがあるとすれば、「旅の幸せはどこに行くか誰と行くかではなく、どのように旅の過程を過ごしていくかというところにある」ということです。似たような言葉を多くの人が残しているとは思いますが、その意味することを実際に経験してほしいなと強く思います。
皆さん旅に出ましょう。六月に入ったとはいえ、夏休みまでまだまだ時間はある、とか思っている人もたくさんいるかもしれません。しかし、これもぜひ忘れないでいただきたい。航空券が最も安いのは大体二、三か月前とかです(経験談)。では。

 

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